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27
翌日、ぼくはランドセルにお菓子を入れたまま学校へ向かい、授業の合間の休み時間を利用して調査を再開した。
六名の重要参考人は、イトイくん、サトウくん、フジサキさん、ムトウさん、ヤマシタさん、ワダくんである。
まず学校へ着くなり、イトイくんの元へ向かった。イトイくんはゲームのすきな明るい少年だ。慎重133センチのぼくより少し小柄だが横幅は太い。
「イトイくん、おはよう。きのうの駅前のケーキ屋のお姉さんの話なんだけど、なにかあたらしい情報は無いかな?」
「特に無いね」
やけにあっさりと言われた。めんどくさがっている雰囲気がありありと感じられる。ぼくは背中に背負っていたランドセルを肩から外しお腹の前に持った。
「そうかい、あたらしい情報があればお菓子あげるのになぁ……」
「えっ、お菓子?」
「飴玉とかガムとかいろいろあるんだけどなぁ……なにか思い出さないかい?」
「う~ん……そう言われてもねぇ……」
イトイくんは使えないな。ぼくはイトイくんを重要参考人リストから外す事にした。
「そっか、それは残念だなぁ、せっかく美味しいお菓子があるのに、ま、なにも情報が無いんじゃ仕方ないね」
「そんな、一個くらいおくれよ」
「だめだよ、ただでお菓子を上げるなんて。ぼくの求めている情報を提供してくれないとね。じゃ、そういう事で」
なるほど、おばあちゃんの言った通り、かなりお菓子をほしがってくる。これは情報を引き出すのに役立ちそうだとイトイくんに背を向けながら思った。
「ちょっと待ってよ。お菓子くれないと、学校にお菓子持ってきてること先生に言っちゃうよ」
ぼくはギクリとして振り返った。イトイくんは先ほどの困惑した表情から得意げな表情に変わっていた。彼のゲーム脳ですばやく計算したのだろう。
先ほどとは裏腹に彼が味方についてくれれば心強いだろうと思った。
「さぁ」
イトイくんが手を伸ばして催促してきた。ぼくは実は持っていないと嘘をついてその場を切り抜けようとしたが、先生に通報されランドセルの中を調べられたらバレてしまうと思った。
そしてママに電話が行き、このワイロ計画はおじゃんになってしまう。
今日のところはお菓子をひとつ与えて黙っててもらう方が得策だと思った。ぼくはランドセルに入っているお菓子の数を覚られないように、慎重に手を入れて一つのお菓子を掴んで取り出した。赤い包みに包まれたガムだった。
「ほら、今日は黙っててよ」
「うむ」
イトイくんはニヤリと笑みを浮かべ、すぐにポケットにガムをしまいこんで去っていった。
なんてことだ、ワイロで情報を引き出すはずが反対に口止め料としてお菓子を取られてしまった。油断した。なんという失態だろう。
ぼくが呆然と立ち尽くしているとチャイムが鳴ったので席に着いた。
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