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「契約結婚!! ケン坊! おまえどこでそんな言葉覚えてきたんっ!?」  おばあちゃんの目が見開いて少し飛び出した。どうやらおばあちゃんには面白い話のようだ。  これは何かいい方法がもらえるのではないかとぼくは嬉しくなった。 「きのう、ママが電話でお話しているのを聞いたんだ」 「マサコのヤツがっ!? こんな年になっても、そんな話をするなんてマサコのヤツも好き物だのぉ、ふひひっ、それにしてもケン坊、大人の話を盗み聞きするなんてイケナい子だねぇ……ふひっ、ふひっ、ふひっ!」  どうやらおばあちゃんもたのしいらしい。やっぱり、ママとおばあちゃんは親子なんだなぁと思った。 「で、ケン坊や、おまえにその契約結婚と何の関係があるんだえ?」  ぼくを見るおばあちゃんの目がギラリと光った。とくに右目の光が華々しい。 「それはねぇ、これはぼくとおばちゃんだけの秘密と約束してくれるかい?」 「ふひっ? なんだえ、人様に秘密にするようなことなのかえ……ふひっ、まぁ、いいだろう、おばあちゃんとケン坊だけの秘密にしよう……さぁ、話してごらんんっ!」  おばあちゃんはなにやらおもしろそうな話だと察したのか、目をキラキラと輝かせて身を乗り出してきた。 「じつは、そのケーヤク結婚をさせられちゃうのが駅前のケーキ屋のお姉さんなんだよ」 「駅前のケーキ屋のお姉さん? そのお姉さんの結婚がなんでお前に関係あるんだえ?」  おばあちゃんはぼくを見ている目を丸くしたあと、ニヤリと笑って細長くした 。 「ケン坊ッ! さてはお前、そのお姉さんに恋をしているんだなっ! そうなんだなっ!? エエーッ! このおませさんがっ! で、そのお姉さんの契約結婚を邪魔しようとっ! そういう魂胆なんだなっ!? ヒヒャーーーッ!」  おばあちゃんが興奮して天を仰ぐと、ところどころ歯の抜けた赤い口が見えた。
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