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「ちょっとおばあちゃん、そんなに興奮しないで契約結婚について教えてよ。ママはお約束みたいな事って言ってたんだけど、約束やぶって結婚しないってこともあるの?」
「約束破って結婚しないっ!? その歳で略奪愛を狙ってるのかえっ!? アイヤーっ! さすがマサコの息子っ! マイッター!」
おばあちゃんは目を瞑って自分のおでこをペチペチと叩いた。
「ちょっと、おばあちゃん、ちゃんと教えてよ」
「はぁっ! はぁっ! すまない、まさか孫にこんな相談を持ちかけられるとはっ! こ、興奮してまうーっ! ふぅっ、ふぅっ、ふひっ、ふひっ……ふぅ~、ふぅ~……ぐふっ……契約結婚か、久しく聞かなくなった言葉じゃのぉ、昔はチョクチョク耳にしたがなぁ、借金の肩だとか」
借金のカタ? 借金という言葉は聞いた事がある。
ママが見ているテレビで言っていた。人にお金を借りる事だ。借金にもぼくみたいな肩があるのだろうか。
「借金の肩って何?」
「借金のかたっていうのは、借りたお金が返せなくなって、お金の代わりに別の事でお金を返すことだえ……ふひっ、ふひっ、ふひっ、若い娘が借金のかた……ふひっ! ふひっ!」
「えっ、じゃあ、お姉さんは借金を返せなくなった代わりに結婚するってこと?」
「それは契約書を見ないとおばあちゃんにもわからなんだ、ただ、契約しないと結婚しないと言う事はあまり良くないことじゃろうなぁ……ふひっ、ふひっ!」
おばあちゃんは目を閉じて肩を震わせながら笑った。
あまり良くないことという事は、お姉ちゃんは好きでない人と結婚させられようとしているという事なのだろうか。
これはとめなければならない。よくわからないが小学四年生のぼくにもそれはわかった。
「おばあちゃん、ぼくそのケーヤク結婚を止めたいんだけど、どうすればいい?」
「えひっ! ケン坊っ、おっ、おまえ小四のくせにっ! こ、これは来るっ! これは来るう~っ……うひっ!?」
おばあちゃんが急に胸の辺りに両手を当て動きが止まった。
「おばあちゃん、どうしたの?」
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