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「うぐっ、ぐひっ、……ほ、ほ、ほ……!!!」  おばあちゃんは胸に手をあてたままうしろにドタッとひっくり返ってしまった。ぼくはすぐにおばあちゃんの脇に駆け寄って、肩を揺すった。 「おばあちゃん? ちょっと、おばあちゃん!? どうしたのっ!?」  揺すれど揺すれどおばあちゃんは目を開けたまま動かない。これは心臓発作だ!  ママの見ていたテレビで見た事があったぼくは思い当たった。こうなったら救急車を呼ばなくちゃならない。 電話はどこだろうと思いあたりを見回したが、ママがいつも使っている電話は見当たらなかった。    早くしないとおばあちゃんが死んじゃうっ! 誰かに助けを求めないと!    ぼくは畳みの上から縁側の靴に足を突っ込み、かかとを潰してはいたままお店の外へ向かって走り出した。  暖簾の先に家が見える。ピンポンして人を呼ぼう。そう思ってお店を飛び出した。  そのとき、急に左から硬い何かがぶつかってきて体が横に吹っ飛ばされた。尻餅をついて、咄嗟に付いた手の平が地面にガガガと擦れた。
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