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グレーを愛すること
私は今、非常に腹を立てている。意を決してここに来たのに、結局何もできなかった。いや、私は行動を起こしたのに、どうすることもできない状況に陥ってしまった。こういうのが1番嫌な気持ちになる。役目を果たせなかった封筒を手に、私は足音を立てて廊下を歩いた。
「ただいま」
ため息交じりで帰宅した。玄関に見慣れない靴がある。大人用のスニーカーと子供用の靴だ。
「あ、千夏おかえり」
「今日は帰りが早いな」
母と父が私に言った。母は夕飯の支度をしている一方で、仕事終わりの父はテレビを見てくつろいでいる。そしてその食卓には来客の姿もあった。
「お邪魔してまーす」
「あ、うん……」
満面の笑みで私を見つめる女性。彼女は私の姉・春奈だ。姉は現在実家を出て暮らしているが、実家が好きなのか頻繁に帰省している。いつものように柔らかな笑顔で迎えてくれた姉に対して、今の私は素っ気ない態度しか取れなかった。
「千夏お姉ちゃん!遊ぼ!」
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