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1番セカンド 生駒優
もう少しだけ、一歩目が早ければあの打球は抜けなかった。
初回の守りでまだいつものように体が動いていなかった。
プレイボールの合図から十数分。
先制出来なかった一回の裏、立ち上がりはピッチャーにとって一番苦しい時間だ。
しっかりと守りで盛り立ててやらなければいけなかった。
ヒットと送りバントでツーアウトながらランナーは二塁。
左打席には相手の四番バッター。
さすが甲子園常連の強豪校だけあって、手強そうなバッターだ。
早く二塁に牽制のカバーに入れる様に、定位置よりも少しだけ二塁ベースよりに守っていた。
ギュインと腕から放たれたボール。
ブンっと鋭い音で空気を切り裂くバット。
カキーンとバットに当たった打球は一、二塁間へと転がった。
一生懸命に足を動かしてボールに向かって横っ飛び。
一歩目が遅れた分ボールに後半歩分届かない。
グラウンドを素早く転がっていくボールは、無情にも差し出したグラブの横をすり抜けていった。
二塁にいた相手のランナーは、三塁を回って悠々とホームに還る。
相手チームに先制点だ。
定位置で守っていたら、十分体がほぐれていたら、きっと届いた打球だった。
もう少しだけ、一歩目が早ければあの一点はやらずに済んだ。
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