あとのまつり

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秋の気配が街に漂い始めた頃、失恋の傷は相変わらずしくしくと痛むけれど、自分なりに少しずつ日常を取り戻していくのを感じていた。 今回でもう最後にしようと決意しながら、隼人の通う学校を覗きに行きたいとゆきえを誘った。 「ごめん、そういうの、ちょっともうやめたいかも」 ゆきえは口元だけで笑っていた。 「お願い、最後にするから」 わたしはすがった。優しいゆきえなら、わかってくれるはず。 「最後にするって、もう何回言ってると思う?」 ゆきえはもう、笑っていなかった。優し過ぎた彼女が、いよいよわたしに愛想を尽かした瞬間だった。 予兆はあった。 花火大会の日あたりから、連絡を入れてもレスポンスは日に日に遅くなり、何かしらの理由をつけて、ゆきえはわたしの誘いを断るようになっていた。 花火大会を前日になってキャンセルした理由も、結局聞けていないままだった。 わたしたち、親友じゃなかったっけ。 友情って、こういう時にこそ深まるものじゃなかったっけ。 暴走っぷりに呆れながらも、どこまでも付き合ってくれるのが友情で、親友じゃなかったっけ!? ゆきえへの絶大な信頼は、あっという間に強い憎しみに変わった。 何もかもを持っている人には、わたしの苦しみなんてわからないんだ。 ゆきえを憎み、自分を正当化することで、なんとか自分を保っていた。 ゆきえから見放され、唯一の光を失った絶望感は、隼人への未練を吹き飛ばすほどの迫力でわたしを打ちのめした。 皮肉にも、以後のわたしは失恋からすっくと立ち直り、また新しい恋を求め始めた。手軽な恋は、探せば身近にいくらでも転がっていた。
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