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第6話
茜音ちゃんの初恋の話を聞き、自然と自分も初恋の話をしたくなった。今までは、人から聞かれても思い出したくなくて、適当にはぐらかしてきた。
だが、茜音ちゃんになら話したい、むしろ聞いてもらいたいと思えた。それは、お互いにどこか似ている部分があるからかもしれない。大切な人を失う悲しみや切なさ――――、そういうのを何となく分かり合えるような気がした。
「……俺の話も聞いてくれる?」
「うん、私でよければ」
食後に注文したアイスティーに口をつけ、茜音ちゃんはこちらに視線を向ける。しばらくの間の後に、俺は話し出した。
「さっきの義姉さん……、悠花のことなんだけど」
「うん」
「俺の初恋の人なんだ」
「……やっぱりそんな気がしてた」
茜音ちゃんは、驚くこともせずにアイスティーを飲み続ける。その反応に拍子抜けしつつも、どこかほっとしている自分がいた。
茜音ちゃんは、子供っぽい反応や仕草をする所があるが、本当は芯の強い大人な考え、対応ができる人だ。実は甘え上手そうに見えて、甘え下手。何回かデートしたり、電話して気付いた。そんな所にどんどん惹かれている自分がいる。彼女とはまた違った魅力がある。
もっと、茜音ちゃん自身のことを知りたいと思うと同時に、自分のことも知ってもらいたいと思えた。こんな気持ちは初めてだった。彼女に遭遇した影響もあるだろう。いつもより昔話を多く話したくなる。
「実は、悠花と会ったのすごい久しぶりで。もう五年ぐらい会ってなかったんだ」
「五年も……。長いようであっという間だね」
「そう、自分でもさっき気付いてビビった。そんなに経ってたことに」
「うん、そうだよね」
茜音ちゃんの相槌に心地よさを覚え、するすると言葉が出てきた。
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