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プロローグ
「ねぇ、本当はもっと欲しいんでしょう? 澪依さん」
「そ、そんなこと……」
「ほら、素直に言ってごらん?」
「ちょっ、ちょっと、ハル! んっ……」
唇に熱いものが触れる。思わず、口を開きそうになるのを何とか堪える。
「言えたら、ご褒美もあげます」
彼の熱い吐息が耳をくすぐる。
仕事をしている彼とのギャップが凄すぎて、未だに甘々モードの彼に慣れない。
こればかりは、永遠に慣れそうもない。
「ほら早くしないと冷めちゃいますよ」
「も、もうー!」
これ以上は耐えられそうになかった。
少し涙目になりつつ、背後に立つ彼の方へ首を巡らす。
「ハル……。あーん、して?」
言った瞬間、一気に頬が熱くなる。この場から逃げ出したいぐらいに恥ずかしい。
だが、彼に背後から抱きしめられていて、願いは叶わず――――。
「よく出来ました。澪依さん、本当にいつもいつも可愛いすぎます」
満足気に彼は微笑みながら、持っていたスプーンを澪依の口に運ぶ。
素直にそれを食べれば、口の中いっぱいに幸せが広がっていく。
「んんー! やっぱり、ハルの作るオムライスが一番美味しいー!!」
自然と口元が緩む。
卵がふわっとしてるかと思えば、舌の上でとろりと溶けてチキンライスの甘みとともにじゅわっと絡み合い、噛めば噛むほどに旨みが出る。
大好きなオムライスを食べているときが一番至福な瞬間だ。
「澪依さんのその表情が見れるなら、何度でも作りますよ」
流れるように、頬にキスの雨が振る。
「澪依さん、愛してます」
「……わたしも」
まだ恥ずかしさが勝って、素直に「好き」の二文字が言えない。
それでも自分なりに想っていることを精一杯、態度で伝える。
「無理、澪依さんが可愛すぎて我慢できない。他の奴にこんな表情を見せたら、絶対ダメですからね」
「えっ、え? どんな表情!?」
「それで良いんです」
彼が強く抱きしめてくる。
よく分からないながらも、彼に応えるように強く抱きしめ返す。
甘い夜はまだまだ始まったばかり――――。
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