第三章 彼女を僕にください

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 自分は、悠誠と息のあった夫婦になれるだろうか。  ふとそんなことを思い、澪依は慌てて思考をかき消す。結婚など、まだ当分は考えられない。 「澪依は、結婚とか考えているのか」 「え! い、いや……」 「あら、お父さん。それは、私達が介入することではありませんよ。二人がしたいようにすればいいんだから」 「……そうだな」  父に考えていることを読まれたような心地になり、澪依は内心焦った。だが、母がすぐさまフォローしてくれ、その話題は瞬時に掻かき消された。昔から、母には助けられてばかりな気がする。 「母さん、準備できたよ」  そこへタイミング良く、悠依と悠誠が台所へ顔を出した。 「もうできたの? やっぱり若い人が二人もいると違うわねぇ。じゃあ、悠依はお箸と箸置きと小皿を持っていて」 「了解」 「悠誠くんは、この大皿を持っていてくれるかしら」 「はい。これも持っていきましょうか?」 「あら、お願いできる? 重いけど大丈夫?」 「大丈夫です。飲食店でアルバイトをしてたことがあるので」  悠誠は、刺し身が盛り付けられた大皿と澪依が漬物を盛り付けた小鉢が乗ったお盆を持ち、大広間へ運んだ。  まくった袖から見えている腕の筋肉に、つい見とれてしまう。細いがしっかりと筋肉がついていて、筋が浮き出る感じが澪依の好みだったりする。 「やっぱり、男前ねぇ。悠依とはまた違った男前感があるわ」 「だよね。ああいう所がかっこいい」 「ふふふ、澪依でも惚気けることがあるのね」 「……他にやることある?」  母に言われて、自然と親の前で惚気けてしまったことに気づき、恥ずかしくなって、すぐに話をそらした。  すべてお見通しの母はにこにこしながら、新たなお盆を出し、グラスを並べていく。 「じゃあ、次はグラスを出して。人数分ね」 「何人来るんだっけ」 「二十人よ。予備で十個ぐらい用意しとかないとね」 「お祖父ちゃんって、本当に地元の人に愛されてるよね」  祖父が生きていた頃から、色んな人がこの家に顔を出していた。突然の来客など、日常茶飯事だった。  店と家は分かれていて、同じ敷地内で徒歩数秒の距離にある。だが、来客は皆、両方に必ず顔を出すのだった。だから、澪依や悠依も小さい頃からご近所さんや常連客とは顔馴染みだ。  祖父は人付き合いが良く、沢山の人に愛されていて、亡くなった今でもお線香をあげに、多くの人がやってくる。その人望は、小さい時から澪依の憧れでもあった。澪依にとって、祖父は自慢の人だった。
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