第三章 彼女を僕にください

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「ハル、今日は本当にありがとうね」 「いえ、なんだかんだ楽しかったですよ」 「相変わらず、女の子たちにきゃーきゃー言われてたね」 「ああ。あれは、おむらいす亭のことを話していたのですよ」 「え?」  テーブルを拭いていた澪依の手が止まる。悠誠はお盆の上に食器をどんどん積み上げながら、続けた。 「うちのオムライスは、それぞれのメニューに社長の想いが詰まっていることを話していたんです」 「そ、それで?」 「皆さん、写真を見てきゃーきゃーとテンションを上げていました」 「へぇ。悠誠くん、ちゃっかりしてるね」  空き瓶や空き缶を片付けている悠依が口を挟んだ。 「女性客は口コミ力がすごいので、売り込んで損はないから」 「ふーん。秘書もなかなか策士だな。じゃ、俺はちょっと店の裏にこれ置いてくる」   可笑しそうに悠依は笑いながら、空き瓶などでいっぱいになった籠を持ち上げて、店の裏にある瓶の回収場所へ片付けに部屋を出て行った。  「澪依さん」 「な、なに」 「嫉妬、しました?」  二人きりになった途端、急に悠誠はスイッチが入る。がらりと声色が変わった。 「べ、別に! 何を騒いでるのか気になっただけで」  思わず、声が大きくなる。だが、気になっていたことは事実だから、嘘は言っていない。けれど、悠誠が少し残念そうに俯く。 「……そうですか。ちゃんと僕は、店の宣伝という名の仕事をしたんですけどね。何か言うことは、ないですか?」 「あ、ありがとう?」 「他に」 「えっ! えっと」  真剣に考え込んでいると、気づけば悠誠の顔が目の前にあった。 「は、ハル?」 「僕の欲しい言葉、分からないですか?」  さっきの甘い声色とは違い、顔がすっかりイジワルモードだ。  腰に腕が回され、固定される。澪依は抵抗を試みるが、筋肉質の腕はびくともしなかった。 「澪依さん」 「……女の子たちに嫉妬、してましたっ」 「ふふっ、素直で宜しい。澪依さんにヤキモチを焼かれるのも悪くないですね」 「や、ヤキモチじゃないから! ちょっとモヤモヤしてただけ」 「、ですか?」  首を傾げながら、悠誠が少し煽るように問いただしてくる。澪依は目を逸らそうとしたら、彼の指で顎をくいっと上に向けさせられた。 「なんで、目を逸らすのですか」 「べ、別に……」 「可愛い澪依さんにはお仕置きが必要ですね」 「え、ちょっ!」  悠誠の唇が澪依の弱い所を攻めていく。だんだん身体の力が抜けていきそうになり、澪依は慌てて両手で彼の肩を押し返そうとした。
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