第一章 彼女に近づかないで

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 株式会社OMUは大手企業であり、卵料理を推しているライバル企業だ。しかも厄介なことにそこの社長が、高校時代の同級生の神村(かみむら)竜也(たつや)なのだ。  昔から俺様タイプで、親の会社を継いでる正真正銘のお坊ちゃまである。  最近、グループ会社にならないかと毎日のように話を持ちかけてきて、少々困っている。「暇なのか」と、言いたくなってしまう。 「……社長、失礼します」  扉がノックされ、返事も待たずに悠誠が入ってきた。 「話は聞きました。二階の応接室を押えてあります」 「仕事が早いわね。ありがとう。今日の会食って、何時からどこなの?」 「十二時から六本木になります」 「六本木ね。神村くんとの打合せは、一時間で切り上げれば、間に合うよね?」 「はい。車は、下に手配しておきます」 「分かった。行くまでに、この書類を片付けられるだけ片付けるから、もう下がっていいわ」  書類の束に手を伸ばし、目を通していく。  けれど、悠誠がなかなか立ち去ろうとしない。不思議に思い、顔を上げたら彼と目が合う。 「どうしたの?」 「……僕も立ち会わなくて、大丈夫ですか?」 「え、別に大丈夫だけど?」 「そうですか……。かしこまりました。失礼します」  何故か、彼の後ろ姿がどことなく寂しそうに見えた。  引っかかりを覚えつつも、すぐに優先順位の高い書類の確認作業に戻る。  半分ぐらい書類を確認し、捺印を済ませたところで内線が鳴った。悠誠からだ。 「はい」 『社長、OMU社の神村様がお見えになりました』 「すぐ行くから、応接室にお通しして」 『承知いたしました。……社長』 「なに?」 『応接室の外で待機しておりますので、何かあったらすぐにお声がけください』 「わ、分かった」  受話器を置き、首を傾げる。  悠誠の様子が何だかおかしい。あまり仕事の時は介入してこないのに、今日はやたら心配しているような、何かを危惧してる感じがする。  だが、すぐに頭を切り替え、身だしなみを整えてから応接室に向かう。  あまり長く待たせると、竜也はすぐ機嫌を損ねる。本当に厄介な人だ。  応接室に辿り着くと丁度、お茶出しを終えた社員が出てくる所だった。まだ悠誠の姿はない。  お茶出し係の社員に礼を言い、扉をノックする。 「どうぞ」 「失礼いたします」  中から低くくぐもった声が聞こえ、扉を開けたら、派手な柄の赤いネクタイが視界を覆った。 「!?」 「会いたかったぞ! 玉木」
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