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「では、各自、本日も宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
ミーティングは三十分ほどで無事終了し、悠誠は携帯を確認する。澪依からは特に連絡は入っていなかった。元々彼女は、あまりマメに連絡をしてくれるタイプではない。分かってはいるが、つい確認をしてしまう。
悠誠は電話をするか、携帯を見つめながらしばしの間迷っていたら、携帯が震え始めた。突然のことに驚き、手から落としそうになって、慌ててしっかりと握る。表示されている名前を確認すると、今しがた考えていた相手からだった。すぐに電話に出る。
「もしもし、澪依さん?」
『あ、ハル。ごほごほっ。仕事中にごめん』
「大丈夫ですよ。それより、咳が出始めましたね」
『うん……。ごほっ。あの、それでね。なんか冷蔵庫に色々と入ってて、何を食べれいいか分からなくて』
「もう起きて大丈夫なんですか? 熱は?」
『さっき測ったら、ごほっ、ごほごほっ。……三十七度八分だった』
「まだ、高いですね……。冷えピタと冷やし枕も冷蔵庫にあるので、それを使ってください」
『あ、あった。ありがとう』
澪依が見つけやすいように、冷蔵庫の分かりやすい所に置いておいて正解だった。ほっと胸をなでおろしつつ、彼女からの質問にも応えていく。
「冷蔵庫にある鍋の中は、お粥を作ってあります。あと、ゼリーやフルーツもその横においてあると思うので、好きに食べていいですよ」
『わかった』
「あ、薬もちゃんと飲んでくださいね。薬はテーブルの上に、置いてあります」
『うん。何から何まで用意しておいてくれて、ありがとう』
病気になって、いつも以上に澪依は感謝の言葉を述べるようになった。言葉にして伝えてくれるのは、かなり嬉しい。
『仕事のことも、よろしくね』
「お任せください。皆さん、澪依さんが休みの間もちゃんと会社を支えてくれてますよ」
『よかった。自分の目に狂いはなかったってことだね……ごほごほっ』
「はい。ですから安心して、休んでください。ご飯食べたら、すぐ寝てくださいね」
『うん、分かってるよ。ありがとう。じゃあね』
「何かあったら、すぐに連絡してください。仕事切り上げて帰りますので」
『わかった』
澪依は短く返事をして、通話を切った。咳が出始めたものの、昨日よりは元気そうで安心した。
だが、少しだけ彼女は寂しそうだった。姿は見えなくても、声で何となく分かった。悠誠は、きゅっと胸が締め付けられる。
「稲垣さん、すみません! 今、いいですか?」
後輩に呼ばれ、悠誠はすぐに仕事モードに頭を切り替える。
「何かありました?」
後輩の元へ、戻りながらスケジュールを頭の中でざっと整理する。今は早く家に帰れるように、仕事を終わらせなければならない。
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