143人が本棚に入れています
本棚に追加
「澪依さん、そろそろ起きてください」
「んんー」
翌日の土曜日、久しぶりに澪依は朝寝坊をした。
「あと、五分……」
「熱々の卵焼きができましたよ。食べなくていいんですか?」
「食べる!」
悠誠の言葉に、ぱちりと目が覚める。勢いよく起き上がれば、悠誠が口の端を上げて、エプロン姿で立っていた。
「卵の力はやはり、偉大ですね」
「だ、だって、卵は出来立てが一番、味が引き立てられて、美味しいんだもの」
澪依は小さく反論をしながら、急いで洗面所へ向かう。悠誠はすかさずベッドを整えて、キッチンに戻った。顔を洗い、身だしなみを軽く整えてからリビングへ行くと、テーブルの上がもう完成されていた。
「わぁ、久々に豪華な朝ご飯」
「やっと熱も下がりましたしね。澪依さんの好きなものばかりにしてみました」
テーブルの上には、鮮やかなサラダや綺麗に巻かれた卵焼き、お手製フレンチトーストにフルーツヨーグルトと賑やかだ。
「なんか、ちゃんとした朝ご飯は久しぶり?」
「朝ご飯、というよりもうブランチの時間ですけどね」
悠誠の言葉に時計を見れば、11時を過ぎていた。
「あ、もうこんな時間なんだ」
「はい。いただきましょうか」
「そうね。いただきます」
手を合わせ、箸を手にする。まずはオリジナルドレッシングがかかったサラダから食べ始める。
「あ、これは玉ねぎドレッシング」
「正解です」
「美味しい!」
市販のドレッシングより、刺激が少なくてまろやかさがある。半分ぐらいサラダを食べた次は、お楽しみの熱々卵焼きだ。
「んー! 甘さがちょうどいいー!」
「よかったです。今回は、白だしの量を少し調整してみました」
「いつもより甘めでいい!」
「今度は出汁巻き卵とかも作ってみましょうか」
「あ、それも食べてみたい」
会話をしながら、箸はどんどん進み、あっという間に卵焼きとサラダが胃の中に消えていった。次はメインであるフレンチトーストにフォークを刺す。既に、悠誠が食べやすいように一口サイズに切ってくれているので、ありがたい。やはり、気の利く男である。
「うわ、これすごい! ふわふわなのに、しっとり」
「初めて作ってみたのですが、成功してよかったです」
「甘さも卵焼きより控えめで、いい!」
「フルーツヨーグルトを上に乗せて、食べるのもおすすめですよ」
悠誠に言われた通りに、ヨーグルトをスプーンで掬って、フレンチトーストに乗せる。そのまま口に入れ、澪依は目を見開いた。
「え、なにこれ! めちゃくちゃ合う!」
「レシピであったので、セットで作ってみました」
「本当にハルの手料理はどれも文句なしだ」
「美味しそうに食べてる澪依さんの姿を見れて、僕も満足です」
休日の朝から糖度高めな雰囲気に、少しだけ照れながらも食事を続ける。
最初のコメントを投稿しよう!