第五章 どんな貴方でもいい

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「澪依さん、そろそろ起きてください」 「んんー」  翌日の土曜日、久しぶりに澪依は朝寝坊をした。 「あと、五分……」 「熱々の卵焼きができましたよ。食べなくていいんですか?」 「食べる!」  悠誠の言葉に、ぱちりと目が覚める。勢いよく起き上がれば、悠誠が口の端を上げて、エプロン姿で立っていた。 「卵の力はやはり、偉大ですね」 「だ、だって、卵は出来立てが一番、味が引き立てられて、美味しいんだもの」  澪依は小さく反論をしながら、急いで洗面所へ向かう。悠誠はすかさずベッドを整えて、キッチンに戻った。顔を洗い、身だしなみを軽く整えてからリビングへ行くと、テーブルの上がもう完成されていた。 「わぁ、久々に豪華な朝ご飯」 「やっと熱も下がりましたしね。澪依さんの好きなものばかりにしてみました」  テーブルの上には、鮮やかなサラダや綺麗に巻かれた卵焼き、お手製フレンチトーストにフルーツヨーグルトと賑やかだ。 「なんか、ちゃんとした朝ご飯は久しぶり?」 「朝ご飯、というよりもうブランチの時間ですけどね」  悠誠の言葉に時計を見れば、11時を過ぎていた。 「あ、もうこんな時間なんだ」 「はい。いただきましょうか」 「そうね。いただきます」  手を合わせ、箸を手にする。まずはオリジナルドレッシングがかかったサラダから食べ始める。 「あ、これは玉ねぎドレッシング」 「正解です」 「美味しい!」  市販のドレッシングより、刺激が少なくてまろやかさがある。半分ぐらいサラダを食べた次は、お楽しみの熱々卵焼きだ。 「んー! 甘さがちょうどいいー!」 「よかったです。今回は、白だしの量を少し調整してみました」 「いつもより甘めでいい!」 「今度は出汁巻き卵とかも作ってみましょうか」 「あ、それも食べてみたい」  会話をしながら、箸はどんどん進み、あっという間に卵焼きとサラダが胃の中に消えていった。次はメインであるフレンチトーストにフォークを刺す。既に、悠誠が食べやすいように一口サイズに切ってくれているので、ありがたい。やはり、気の利く男である。 「うわ、これすごい! ふわふわなのに、しっとり」 「初めて作ってみたのですが、成功してよかったです」 「甘さも卵焼きより控えめで、いい!」 「フルーツヨーグルトを上に乗せて、食べるのもおすすめですよ」  悠誠に言われた通りに、ヨーグルトをスプーンで掬って、フレンチトーストに乗せる。そのまま口に入れ、澪依は目を見開いた。 「え、なにこれ! めちゃくちゃ合う!」 「レシピであったので、セットで作ってみました」 「本当にハルの手料理はどれも文句なしだ」 「美味しそうに食べてる澪依さんの姿を見れて、僕も満足です」  休日の朝から糖度高めな雰囲気に、少しだけ照れながらも食事を続ける。
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