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まさかビールに何か入れられたのか?
ふと、そんな想像をしていると、急に気分が悪くなってきた。
喉がチクチクと針で突き刺されるように痛む。胸の中で小動物が暴れているかのような違和感を覚える。
ゴホゴホッ。思わず咳き込んでしまう。
急いで口元にあてた右手には、真っ赤な鮮血がついていた。
「由香、お前……」
今まで見たこともないような笑顔を由香は浮かべていた。
「友くんは私だけのもの……。世界で一番好きだよ。もう少し……どころか、永遠にいっしょにいられるんだよ」
次の瞬間、俺は床の上にドバっと大量の血を吐いた。
胸が焼けるように熱い。息が苦しい。呼吸ができない。喉が締め付けられるようだ。
俺は苦しみのあまり、その場にうずくまった。
「友くんは、ずっと私といっしょにいる運命なんだよ。遺体になっても……ね」
だんだんと気が遠くなっていく。
薄れゆく意識の中で最期に見たのは、苦しむ俺を満足そうに見下ろしている由香の小悪魔のような笑顔だった。
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