1人が本棚に入れています
本棚に追加
マコトは、きょろきょろとしきりに周囲を見回してばかりいたが、アトを認めるなり安堵したようにぱっと表情を明るくし、喜び勇んだ。
「あっ、師匠!やっと見つけた!」
「それで、明日の準備は?」
「うん、今日中には終わるよ!昨日は加賀亞にめちゃくちゃにされたけど、明日こそは絶対成功させないと!」
「よーし!」
「でも、師匠。おかしな話を聞いたんだけど…聞く?」
「聞く」
「なんでもこの宝席町にはね、“風の教”っていういかにも胡散臭そうな集団がいるんだって」
「風の教?なんだそれ?」
「ほらあれ」
マコトの指さした先には、広場の隅に寄り集まって立ち尽くす不審な集団があった。白い頭巾に、やけに細長いマフラーを身に纏った銘々が、行き交う人々に向かって声高に訴えかけていた。
「風を見よ!あなたのそばには、いつだって風が吹いている!晴れの日も雨の日も、風は我々に恵みを運んでくださるのだ!だからこそ、風にありがたみを!」
その奇怪な集団にアトは言葉を失い、目を丸くした。普段は人気の多い広場が今に限ってまばらなのは、彼らの奇怪な街宣活動が人々から敬遠されてしまっているからだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!