1人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は、道化師の集団にたちまち取り囲まれてしまったのにもかかわらず、まるで動じず、それどころか声を一層張り上げて叫んだ。
「この加賀亞リンに指一本触れてごらんなさい!!わたくしのお父様が黙ってませんわよ!」
聞き覚えのない名前にアトが首を傾げると、一座の面々は少女を組み伏せようとするのをやめ、ぼうっと立ち尽くした。
「加賀亞リン!」マコトは、頭を抱えて嘆き出した。「加賀亞財閥のお嬢様!なんでこんなところに~!」
加賀亞リンは、からすの魔術曲芸を観客として一度見物したことがあったが、尚以て魔法の存在を懐疑し続けていた。だからこそ、いまや重宝の如くもてはやされるアトに対しても不遜な態度を貫いた。
「からすの座長、光アト!現代魔法の第一人者として、わたくしに魔法の存在を認めさせることができるかしら?」
「お前に認めてもらう必要なんてない!」アトは、むきになって言い返した。
「あら、そう。もしわたくしからの挑戦を断るなら、あなた方の一座は即刻解散!」
最初のコメントを投稿しよう!