現代魔法の第一人者

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 加賀亞は、観衆に向かって手を打って「さぁ、もう舞台はお開き!ただちに帰らないと、あなたたち、この町にいられなくなりますわよ!」とがなり立てた。すると観衆は、加賀亞の威光に恐れをなしたのか、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。アトは愕然として「おーい、戻ってこーい!戻ってこーい…」と観衆を呼び戻そうとしたが、まもなく舞台は閑散とした。加賀亞は、人気のない舞台下を見下ろして悦に入り浸りながらアトを挑発した。 「どうかしら?あなたの一座も、すぐに離散しますわ。あの観客たちのように」  せっかくの舞台を台無しにされ、アトは、とうとう我慢ならなくなった。 「おい、なんてことすんだ!今すぐ呼び戻せ!」 「嫌ですわ。だって、わたくしの悩みを下々に知られるなんて耐えられませんもの」 「悩み?」 「ええ。わたくしの弟を見事捜し出すことができたら、あなたの広めた魔法とやらを認めてあげてもよくてよ」  加賀亞は胸を張って悩みを打ち明けたが、それを聞いたアトは拍子抜けさせられた。 「なんだ、人探しかぁ…」 「ずっと行方知らずになっているのだけど、きちんと連れ戻せるのでしょうね?」 「当たり前!」
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