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アトは、気色ばんでいたのが一転して加賀亞に微笑みかけた。加賀亞の弟を手っ取り早く連れ戻すために魔法を使おうと思い立つと、まず加賀亞にこう頼んだ。
「なぁ、弟が持ってたもの、何でもいいから持ってないか?」
加賀亞は、手櫛を取り出すなり、「弟が普段から使っていたものよ」と言ってアトに手渡した。アトは、その手櫛を手のひらで丸め込んだかと思いきや、一羽の鴉に変えてみせた。
「こいつが弟を捜し出してきてくれる」
鴉は、夕空に向かって飛び立った。五分も経たないうちに弟をぶら下げて帰ってくる。そうと思い込んでいたばかりに、鴉が手ぶらで帰って来た時には、アトはひどく面食らった。加賀亞は、待ちわびていたかのようにアトを小馬鹿にした。
「あらあら、やっぱりインチキじゃない!魔法なんて所詮はトリックなのよ!」
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