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加賀亞は、普段から持ち歩いている弟の写真を見せてやった。マコトと同い年くらいで、加賀亞と肩を並べて微笑んでいる。この目で弟の姿を見たのだから、アトは加賀亞に弟がいると信じた。
アトは座員の一人にその写真を渡して「この人を探せ」と命じた。皆は町中へ繰り出し、まもなく散り散りとなって加賀亞の弟を捜し始めた。
「弟探させるからさ、また明日きてくれよ」
「あら。もう魔法に頼るのはやめにしたのね」
「時には地道にやらないとな」
「そう。じゃあ、ほどほどに期待してるわ。また明日」
加賀亞がそっけなく帰ってくれたから、アトは少し安堵した。か細くため息を吐くと、その浮かない顔をマコトが覗き込んできた。
「ねぇ、師匠。今日は調子悪かったね。二回も魔法を失敗しちゃうなんて」
「弟を捜せだなんて、加賀亞も人が悪いな」
「え?」
「あいつの弟は、この世にはいない。亡くなってるんだよ。だから、捜しようがないのさ」
「え…。でも、そんなこと一言も…」
「俺を試したんだろう。魔法で人を生き返らせることができるのかどうかを」
そこでアトは拳を強く握りしめ、
「今の俺には無理だ…。でも、いつかきっと…!」
アトは、かねてから人を蘇らせる手段を見出すことに余念がなかった。だから、魔法を使って死者を蘇らせようとすると、ことごとく不発に終わることを思い知っていた。
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