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「諦めなければ、なんだってできる。誰かを生き返らせることだって、いつかきっと」
アトは、そこで席を立って足早に屋敷から出て行った。ところが、アトが言葉に含みを持たせたものだから、加賀亞は、万が一にも弟が生き返るのではないかと一抹の期待を抱かされた。屋敷の外までアトを延々と追っかけて行き、彼と肩を並べて街道を歩いて付きまとった。
執拗に追いかけ回され、アトは、いよいよ腹を立てた。
「ついてくるなよ!もう話は済んだんだ!」
「魔法をもってすれば人を生き返らせることもできるのね?」加賀亞は神妙に尋ねた。
「さぁな。とにかく今は、からすの公演を頑張らないと。明日の晩にあるからさ、今度は絶対邪魔するなよ」
「わたくしの弟とあなたの手品、どっちが大事ですの!?」
「手品じゃなくて、魔法!からすの方が大事に決まってる!」
「あら、不愉快ですこと!そこまでして人気者になりたいのかしら!?」
「そうじゃなきゃ……あの人を見つけられないからな」
「は?」
加賀亞が呆気に取られると、アトはこの際だからとこう教えてやった。
「俺、人を探してるんだ。昔、俺に魔法をくれたあの人をな」
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