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現代魔法の第一人者
人々は、“魔法”が実在していたことに驚き戸惑った。ある日、魔法を使った見世物を披露して回る一座が現れ、たちまち脚光を浴びた。その一座は、魔術曲芸“からす”と名乗った。からすの座長を務めていた光アトは、魔法使いである。いまだ十五歳の少年であったが、世間からは“現代魔法の第一人者”と称され、盛んにもてはやされるほど著名な人物となっていた。アトは、人々の期待に応え、不可思議な魔法をさながら手品のように披露し、ある時は道化に徹してまで観客を大いに沸かせていた。
世界を転々としながら興行していたからすの一座が“宝席町”を訪れた。洋館が立ち並び、至る所に赤レンガの道が敷かれた、西洋の情緒にあふれた町並みである。からすの一座が魔法を披露するのは決まって夕方、町の一画に簡素な舞台をこしらえ、そこで見世物を始めると、瞬く間に人々が集った。好奇と期待を一身に受け、アトは深々とお辞儀をして、それから魔法を始めようとした矢先、一人の少女が観客を割いて堂々と舞台に上がってくるなり、「魔法だなんて胡散臭い!今すぐおやめになって!」と声を張り上げてアトに迫った。
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