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「あー、どうすっか。しばらくは帰れねぇしな」
俺は住宅街を適当にぶらつきながらぼやいた。足元から這い上がってくる冷気にくしゃみが出る。
十二月も下旬、雪も振りそうな中で薄手のスェットの上下にサンダル姿で歩く俺を通行人が奇異の目で見ていく。それをガンを付けて黙らせるが寒い。腕を擦りながら、せめて上着を持って出るんだったと前回と同じ後悔をする。
過去に戻ったとはいまだに信じられないが、覚えのある出来事を追体験しているのも事実。それに先ほどすれ違った親子が、クリスマスまであと二日と話していた。俺の最後の記憶では今日はクリスマスだったはずだ。本当に俺の意識だけ過去に戻されたらしい。思わず乾いた笑いが漏れた。死の瞬間は覚えていないが、どうせ借金取りの奴らにやられたんだろう。世間がお祝いムードの中ずいぶん侘しい死にざまだ。
それにしても未練なんて覚えがない俺が、なぜ二日前に戻されたのか。考え込むが何も分からない。とりあえずどこか店に入って考えようとポケットの中を探る。入れっぱなしの小銭を数えるが、よせ集めても三百円にわずかに届かない。
「時を戻すってんなら借金帳消しか、遊ぶ金を寄越せってんだ」
気の利かない天使に悪態をつく。寒さから逃れるため、コンビニで酒でも買って時間を潰そう。本当はタバコも欲しかったがどうやっても手が届かない。腕を組みながら足早に歩いていた時だった。
公園のベンチに小学生くらいのガキが一人で座っているのが見えた。その姿を捉えた時、俺の足は操られるように公園へ向かっていた。
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