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ガキの隣、開いていたスペースにどかりと座る。立ち去りたい俺の意志に反して動こうとしても動けない。声が出るか試したが、風の抜ける音がしただけだった。
どうにもできないまま座り続ける。木製のベンチは冷えていて体温を奪っていく。くしゃみをしながらも去る気配のない俺にようやくガキが目を向けた。そして俺を上から下まで見て一言。
「おじさん、何その恰好。寒くないの?」
口の利き方がなっていない。見上げているのに見下すという器用なガキに青筋が立つ。こちらをしげしげと見て、何かを察したように口を開いた。
「もしかして追い出されたの? 大人なのにダサ」
「別に追い出されたわけじゃねぇ!」
ガキは俺の大声に耳を塞いだ。声が出たことで思わず喉に手を伸ばす。そんな俺をガキは胡散臭そうに見ている。
「じゃあなんでそんな格好でいるの?」
「……悪い奴らに追われてるんだよ」
「ふーん」
本当のことは言えず適当に誤魔化す。ガキは信じてなさそうだったが、何か思いついたのか笑顔で口を開いた。
「じゃあ、僕がかくまってあげようか?」
「はぁ!?」
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