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仁に連れられてたどり着いたのは小綺麗な一軒家。仁が鍵を開け、中へと促される。誰もいない室内は物の少なさも相まって寒々しい。じろじろ室内を見回す俺を放置して仁は電気と暖房をつけていく。
「マジで親いねぇのな」
「両方仕事行ってるし、いつも来てくれてるお手伝いの悦子さんもお母さん倒れたからしばらく来れないんだ。そのことあの人達知らないから。それよりもポチ、お腹すいてない?」
警戒心のない様子にあきれ返っていると仁が聞いてきた。本当に犬を拾ってきたていでいるようだ。冷蔵庫の中を確認する仁の後ろから覗くと、冷蔵、冷凍合わせて一週間分くらいの料理が詰め込まれていた。
「うまそうだな。家庭料理なんて久々だ」
思わず腹の虫が鳴っていた。そんな俺の様子に仁が笑う。
「悦子さんの料理は美味しいけど、レストランの料理と変わらないよ。お金を貰って作ってるだ――いてっ」
頭で考えるより先に手が出ていた。俺のチョップがクリーンヒットしたらしく、頭を抱えている。
「なにするんだよ!」
「金を貰ってようが、お前のことを考えて用意されたもんにそんな口きくな」
「……うん」
目についたものを二人で取り出すと蓋にレンチン時間が書かれていたので、その時間に合わせて温める。その後は二人共で無言で食べ進めた。
その日の晩は掛け布団だけ借り、リビングのソファで眠った。
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