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二十四日の夜、仁が寝たのを確認して家を出る。何かを感じていたのか、なかなか寝なかったのでもう時間がない。ほとんどの商店は明かりを落としている中で、開いている店に飛び込んだ。
店内を足速に周り、目にとまったものを持ち上げる。値札を確認して、舌打ちがもれた。手持ちの金では到底、手が届かない。
(せめてもっと早くに気付いてりゃな)
ここまで追い詰められないと自分の気持ちにも気付けないとは、つくづく出来の悪さが嫌になる。
それでも諦めずに散々探してようやく一軒の店の片隅でそれを見つけた。
帰り道を急いで帰る途中で、手の甲を見る。薄暗がりの中では痣はほとんど判別できないほど薄くなり、もういつ死んでもおかしくない。
知らず知らずのうちに俺の足は走り出していた。吐き出す息で視界がかすむ。タバコにやられた肺は空気をうまく取り込んでくれず、すぐに息が上がる。もつれて転びそうになりながらも、一軒家まで戻ってこれてホッとした。息を整え、仁の部屋に滑り込む。起こさないようにそっとベッドヘッドに手の中のものを置く。
「じゃあな」
目に焼き付けるようにその寝顔を見つめた。
俺は家に鍵を掛け鍵をポストに入れると歩き出す。しばらく歩くと俺の意識は暗転した。
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