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真実
「お前の父様は東京から長期の出張で島根に来ちょった。真面目で立派な人だった。
一月余り一緒に過ごしたある日、父様は母ちゃんに言うた。
『あと少しで東京に戻らにゃならん。一緒についてきて欲しい』って。
だども母ちゃんの方から断ったのさ。
足の悪いばあさまを一人残しては行けん。
私のことは忘れて欲しいってね。
何度も説得されたども、とうとう母ちゃんはウンとは言わんかった。
仕方なく父様は一人で東京に戻ったのさ。
お前が腹におることが分かったのは、父様が去って一月以上経ってからだった。
母ちゃんはお前を一人で生むと決めた。
だから父様はお前が産まれたってことを知らんのよ」
「なんで!? 後からでもあんたの子だって言えば……」
龍二はガタンと音を立てて立ち上がった。
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