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幸せになるために
「一人でお前を幸せにできるか不安だった母ちゃんは、出雲の神さんに参ったのよ。
その時お店に飾ってあったこのダルマ様を見つけてね。どげでもうちにお迎えしとうなって、無理を言うて譲ってもらったのよ。
『ダルマ様、力を貸してください』っていつもお祈りしちょった」
「……ダルマ様が呼びに来てくれたんだ」
「えっ?」
芳恵は不思議そうな顔でワシを見る。
「バス停に向かって歩いてたら、いきなりダルマ様が空から降ってきたんだ。嫌な予感がして家に戻ったら、母ちゃんが倒れちょった。
……ダルマ様はちゃんと知っちょったんだ。母ちゃんがおらんようになったら、俺は絶対、幸せになんかなれんって。だから呼び戻しに来てくれたんだ」
「そげな不思議なことが……?」
芳恵と龍二は顔を見合わせてからじっとワシを見た。そして揃って手を合わせた。
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