6

5/15
前へ
/125ページ
次へ
 入学式から1ヶ月が経ち、虚もそこそこクラスに馴染んでいた。  虚は部活には入らなかった。  勧誘はたくさん受け、体験も沢山やりはしたのだが、どれも虚の興味を惹くものは無かったのだ。  1年A組には、虚の他に藤堂暁や渡瀬メルなどが部活未所属となっている。 「ねーねー黒咲さん。 今日って暇?」 「ひゃい!?」 「うぉわ!?」  帰りの準備をしていた虚の背後から急に話しかけられ、虚は飛び上がる。  そしてその反応に相手も驚き、何がなんだかわからなくなる。  先に正気に戻ったのは虚だった。 「あ、えと、渡瀬さん…… どうか、しましたか?」 「あ、えーっとね! もし今日暇だったら一緒に帰らない?美味しいクレープ屋さん見つけたんだ」 「別に、今日は暇ですけど……でも、私なんかでいいんですか?」 「黒咲さんがいーの。 黒咲さんの事いろいろ知りたいし」 「はあ…… 別に、大丈夫ですよ?」 「やったぁ! ありがとう、黒咲さん」  そう笑顔を見せてくる渡瀬メルを、虚は素直に眩しいと思った。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加