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「……美味しい」
「本当?よかったぁ」
虚とメルは2人でクレープを食べていた。
「でも、何で私なんかを誘ったんですか?
渡瀬さんだったら、もっと他に誘う友人がいたでしょうに」
虚は食べながら首を傾げる。
虚の印象では、メルはクラスの中心的な人物だ。
人懐っこく、いつも明るい笑みを絶やさないため常に周りに人がいる印象を持っている。
自分とは真逆の人間だ。
「……黒咲さんってさ、いつも人と一線引いてるでしょ?」
「……ぇ」
バレていたのか、と虚は心の中で思う。
人との関わりに少なからずトラウマを持つ虚は、どうしても人と一線を引いて話してしまう。
それを誰かに指摘されるのははじめてで、虚は戸惑いを見せる。
「だから、そんな黒咲さんのこと、いっぱい知りたいなって思って。」
「……そうなん、ですか?」
「まあ、それは建前。
本音は、ボクが黒咲さんとお友達になりたいってだけ」
「はあ」
「…てなわけで、黒咲さん。
ボクとお友達になってください!」
そう言ってメルは頭を下げる。
虚はどう反応すればいいか困っているが、直ぐにいつもの調子を取り戻す。
「渡瀬さんって、周りに人がいる割にはお友達とか作るの苦手だったりしますか?」
「う……」
ポロリと溢された呟きに、メルは言葉を濁す。
「まあ、それは私もなんですけど。
……大丈夫ですよ。お友達」
虚は頭を下げるメルのもとに行き、手を差し伸べる。
「……これは?」
「握手ですよ?
お友達になるときなどによろしくお願いしますの意味を持つと教わりました」
「ぷっ……」
急に吹き出したメルに虚は怪訝な視線を向ける。
「?
私、何か変なこと言いましたか?」
「いや……黒咲さんって、面白いなあって……
まあ、よろしくお願いします」
メルも手を差し出し、握手が交わされる。
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