6

9/15
前へ
/125ページ
次へ
「虚、凄かったね!テスト1位だってよ?」 「そんな騒ぎ立てないでください、目立っちゃいます……」 「いやいや、張り出されてる時点でもう十分目立ってるから」 「うう……」  虚はメルの隣で肩を落としていた。  周囲の視線が痛いのだ。  学年1位なのだから、それは注目を浴びることになるだろうが。 「それにしても、トップ2がどっちもうちのクラスだなんてね。」 「ああ、彼……藤堂暁さんでしたっけ。 凄いですね」 「虚が言うと皮肉にしかなんないんだよなぁ」 「ごめんなさい……」 「あ、噂をすれば」  そうメルが視線を向けた先には、階段の方へと走り去っていく藤堂暁がいた。 「ぁ……」 「ん?どったの?」 「いえ…… ねえ、メル。 今日のクレープ会、明日にしてもらっても大丈夫ですか?」 「別にいいけど……何で?」 「特に何とも無いとは思うんですけど……彼が、何か……何というのでしょう、何か、気になって」 「え、もしかして一目惚れ?」 「それはないです」 「えぇ……」  メルの言葉を即答で否定する虚。 「では、また明日」 「うん、ばいばーい」  メルと教室で別れ、虚はすぐさま暁が走り去っていった階段へと向かう。  杞憂で済めばいいが、彼からは自分と同じ気配を感じた。  死を、何とも思わない、そんな気配が。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加