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振り返ると、そこには黒い髪を背中まで伸ばした少女──学年1位の、彼女──黒咲虚がいた。
「ああ、黒咲さん。
こんなところに、どうしたの?」
少年は平静を装って話し出す。
さっき、彼女は「死んではいけない」と言った。
つまり、彼女は自分が死のうとしたことを分かっている。
そう、頭では理解しているのに、それでも『普通』を装ってしまう。
恐ろしく滑稽な、道化だ。
「どうしたも、何も……っ」
彼女は歩みを進め、少年へと近づく。
「貴方、死のうとしてたじゃないですか……」
彼女も平静を──冷静を装い、感情を抑え込んだ声音で告げる。
「死のうとしてたって?
俺、ただ町を眺めてただけなんだけど」
そう、往生際悪く誤魔化しを続ける少年に、虚は冷えた声で喋る。
「無駄な言い訳はよしてください。
貴方は、死のうとしていたでしょう?」
虚は再び少年との距離を詰める。
少年は後ずさろうとするも、後ろはフェンスなので下がる事が出来ない。
「……何で分かったんだ?」
諦めた少年は、降参の意を示しながら溜め息を吐いた。
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