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「食人鬼の、末路……」
「ええ。
人の肉は……肉は、栄養が偏っている。
これは、当たり前の事。
じゃあ、肉しか口にできない人はどうなってしまうの?
……当然、栄養失調となる。
栄養失調となったら、それはもう死の路まっしぐらよね。
まあ、零人は多少だけど人肉以外の物も食べられたし、食べる頻度も少なかったから大分長く持った方よ。」
「そうね。
……あいつは、今年で7年かな」
「……そんな」
虚は絶望に視界が真っ暗になる。
そんなこと、零人から教えられなかった。
「……零人は、死ぬんですか?」
「死ぬな。
俺の見立てでは1ヶ月以内に」
「なら、なおのこと会わないと。」
「だけど、それは」
「お願いします。
……零人のもとへ、案内してください」
虚はバッグの中からナイフを取りだし、自分の首筋へと向ける。
「……虚!!」
「案内してくれないというのなら、私はここで首を切って──零人のもとへと連れていって貰います。
肉となって……食料として」
「……!!」
皆驚愕し、言葉は誰からも発せられない。
「……分かったわ。
連れていく」
その沈黙を破ったのは菜々美だった。
「……菜々美!!
それは、零人は……」
「この子はきっと、何としてでもアイツのもとへと行くつもりだから……
それに、大切に育ててきた子の前から自分が死ぬからと言って身を隠すのはおかしいと思うしね」
菜々美は人の悪い笑みを浮かべる。
「……菜々美さん」
「このカウンターの奥の地下室に、零人はいる」
「──ありがとうございます」
虚は地下室へと駆け込んでいく。
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