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「いや、だからさ、俺ここに住んでいい?」
「……何を言っているのか分からない」
「そのまんまの意味だって」
「どういうことですか私に何の用ですか」
「俺の話し相手になってほしいんです」
「………」
「え、ノーコメント?」
「………意味がわからない」
第一、何で話し相手になってほしいからってここに住むことになるのだろうか。
話が飛躍しすぎではないだろうか、と少女は思う。
「だからさ、俺は君に俺の話し相手になってほしいわけ。
できたら、今すぐにここから連れ出したいくらいに。
でもさ、君は学校があるわけだし、君が1人で住んでたら色々アレだし、それに君はお金を稼げないから家を出るしかないだろう?」
「………」
少女は首を振ることで反応する。
「だから、俺がこの家に住むことで、君はこの家に住み続けることができる。
こう見えても俺、ちゃんと働いてるからね」
「……殺人鬼を雇う会社があるの?」
「いやいや、話すわけないじゃん」
私には話してますけど、と少女は意図せず白い目で食人鬼を睨む。
「それに、俺には雨風を凌げる場所ができる。」
「………」
住む場所無いんですか。
少女は思わず溢しそうになった本音を抑える。
「……つまり今日ここに来たのって、新しい家を奪うために……?」
「そ、そんなわけないじゃないですか……」
食人鬼は目を逸らしている。
怪しい。
「まあ、私は問題無いですし、別に大丈夫ですよ。」
「え、ほんと!?」
食人鬼は目を輝かせる。
フードを被ってるのでよく見えないが。
「……ちなみに駄目って言ったらどうなりました?」
「うーん。
君も殺して奪うかな」
「じゃあ駄目です」
「でもさっき良いって言われたもんねー
それじゃ、これからお世話になります」
そう言って男は手を出し、もう片方の手でフードを下ろす。
「……?」
「あれ、握手って知らない?」
「……何ですか」
そう少女が聞くと食人鬼は少女の手を掴んで自分の手と繋がせる。
「こうやってすること!
『よろしくお願いします』みたいな意味かな?」
「そうなんですか……
では」
「「これからよろしくお願いします」」
少女たちはある程度手を繋いだ後に離す。
「……じゃあ、私は寝ます。」
「うん、おやすみー」
「……おやすみなさい。」
少女は部屋に戻る。
こうして、少女と食人鬼との奇妙な共同生活が始まった。
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