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――ああ、そうだ。彼と行けばいい。
だって、あんなに好きだったんだから。
この先、何度も夢に見るんだよ。
この先、何度も涙を流すんだ。
彼がいたら。
彼と生きられたら。
いっそ、自分も死んでしまえたらなんて。
彼がいないこの町で、そんな毎日を繰り返しながら生きていくんだ。
だけど、なかなか死ぬことなんてできなくて。
色んな人と出会って。
いくつもの季節が過ぎていって。
彼のことを考える時間も少なくなっていって。
いつのまにか、それなりに笑えるようになって。
そんな薄情な大人になっていく。
だけど……それでも、今のわたしには大切なものが――
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