婚約者である令嬢は今日も僕の前でサングラスをかける

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「これ程までに心の清いマルク様に、幻滅するなんてありえません!」  僕は苦笑いするしかなかった。  魂の輝きがなくなった理由、それを知って君はどう思うだろう?    今、この頭の中で君がどれほど《はしたない姿》にされいるか想像もしていないだろう。  顔を赤らめ、苦しそうに吐き出す息に甘い嬌声を混じらせながら、この手から与えられる快楽に溺れ翻弄されているなど、純粋な君には到底考え付かないだろう。  残念ながら僕は、聖人じゃない。  特に君に対しては、獣にすら成り下がる。  アリアナがこちらを見上げる。  僕の魂の色が白の輝きだというのなら、彼女はきっと春の日差しのような穏やかな黄色だ。   彼女の微笑みを見る度に、心に温もりが宿り全身に活力がみなぎる。  そんな癒しに満ちた彼女に、度の過ぎた情欲を抱く自分に苦笑するしかない。  彼女がサングラスなしで僕を見る事が出来るようになったのは非常に喜ばしいが、こんな気持ちを抱き続けなければならないとなると、いずれ妄想を現実にしてしまう。    こんな僕に幻滅し、婚約破棄でもされようものなら――  ……冗談ではない。 「結婚を早める必要があるかな……逃げられないように」 「え? マルク様、何か仰いました?」 「ん? いいや、こっちの話だよ」  アリアナの最高の笑顔を見つめながら、心の内を隠すように僕は微笑み返した。  <完>
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