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「実は、、最近同じクラスのやつ、朝田っていうんだけど、そいつとその取り巻き何人かに、ちょっとしつこく嫌がらせされててさ。
最初は、消しカス投げられたりとか軽いやつだったんだけど、どんどんエスカレートしてきて、、教科書隠されたり、制服汚されたり、最近は殴られたりもあって、、、周りも俺のこと、いないように無視するから、精神的にどんどんきつくなってきたんだ。
それでさ、今日、我慢できなくなって、なんで俺にこんなことすんだよって、朝田たちに聞いてみたんだ。
そしたら、あいつら、『意味なんてねえよ、暇つぶしだ』って、、それで、なんか心折れちゃって、、」
歩は、後半、つっかえながらも話をしてくれた。
信じられなかった。
俺の弟がいじめられているなんて、信じられなかった。
「気づいてやれなくてすまなかった。」
俺は、歩を見て謝る。
「いいよ、高校になって家で話すこと少なくなったし、兄ちゃんと俺クラス違うし、、」
諦めているというように力なく笑う歩。
そして場が静まる。
「あーあ、兄ちゃんみたいに何でも出来てクラスの人気者だったら、きっといじめられなかったんだろうな。俺、兄ちゃんになりたいよ。」
その静けさを切り裂くように歩が言う。
「……何言ってんだよ、、お前は十分いいやつだよ。」
ありきたりの言葉をかけることしかできないことを悔やむ。いっそのこと俺が歩と代わってやれたらいいのに、、、あ!
「そうだよ!俺がお前と代わればいいんだ!」
「えっ?」
「だからさ、俺がお前に変装して朝田を懲らしめてやればいいんじゃないか?なんたって俺たちは双子なんだし!背格好はほぼ一緒だし、髪型を一緒にすれば、、、ほら、わかんねえって!」
髪を下ろして、歩と同じ髪形にする。鏡で見合わせてみて、やはり双子なんだなと思う。
「でも兄ちゃんに迷惑なんてかけられないよ、それに——」
「何言ってんだ、兄ちゃんにくらい迷惑かけてくれよ。それによ、愛する弟をいじめられて俺だって腹立ってるんだぜ?」
歩の言葉を遮って俺は勢いよく言葉を並べる。その勢いに圧倒されたのか歩は、
「わかった、ありがとう兄ちゃん。ただ、やっぱ俺の手でやり返さなきゃいけないと思うから、俺にやらせてくれ。」
真っすぐな眼差しで俺を見てくる歩。
「よく言った、頑張ってこい。ただ、時間を延ばしてもいいことはないからな、明日の放課後に決行しないと俺が代わりにやるぞ?」
歩の成長を目の当たりにし、それを嬉しく思いながらも、その決意が変わらないように時間を決める。
「え、明日は生物部の話し合いがあるんだけど、、」
「それこそ、兄ちゃんが行けばいい。さっき俺がお前に変装できる確認済みだからな。」
「でも、、」
「よし、決まりだ。バシッと決めて来いよ!」
歩は少し悩んでいたが、生物部の話し合いで何を話せばいいのかを台本に書いて渡してきた。どうやら生物部の役目はしっかりとこなしたいらしい。また、他の人にバレないようにするために、話し合いが終わったら、その台本を破って捨てるように言ってきた。
俺はそれを了承し、歩はそこまでしてくれるならと明日の放課後、やり返しを決行することを決めた。
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