奪い奪われて

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その後、兄さんが車と別荘を2回ぐらい行き来して荷物を運んだのを確認出来た。 千鶴を確認出来たのも最初だけだった。 なんとももどかしい気持ちだった。 そんな訳であまり食欲は無かったがきっちりと食事は摂らないといけないと思い冷凍食品のパスタを用意してひたすら音声に耳をすました。 しかし、聞こえてくるのは時折キッチンを使用している音のみ。 会話などは聞こえなかった。 少なくても二階の部屋に千鶴がいるのはわかっている。 そして本来だったら結婚式を上げる今日、きっと二人で何か食事でもすると、そしてフォトを撮ると思った。 それはいつかとパスタのフォークを止めて考える。 「……さっきの別荘に入る前の行動……外を警戒していたように見えるんだよね。別に二人で鍵屋さんを迎えてスムーズに部屋に入ればいいのに」 だったら。 「日が明るい間は動きはないかな……。夜。夜にきっと動く」 千鶴のあの様子からしてテキパキと行動する感じにはみられなかった。 多分兄さんが色々と準備をするのではと思った。 その準備に集中しているときに──こちらも準備を終えてから乗り込んでやろうと思った。 そこで少し冷めたパスタを一気に胃に押し込んだ。咀嚼しながら思う。 あまりにも深夜だったら警察に通報してもここに来るまでに時間のロスがある。 事前に調べていたが、ここから一番近い警察署はそう大きくない。 交番からここに来るとしてでも深夜ならやはり時間が気になる。 それに両親に連絡することも加味しても。 警察のまだ動きやすい時間を考えても21時までには行動したいと思った。 「20時ぐらいがベストかな。動きがなくても20時には別荘に向かう」 それが良いと思った。 それまでにする事は──わりとある。 車でここに来たなのならまず、移動手段を潰しておかないといけないし。 ナンバーも確認したい。 そして此処を出て行く準備。 最終的に全てが上手く行った時の言い訳として。 僕がたまたま千鶴のウエディングフォトの話を思い出した、ちょっと様子見に行った。 確実な事は言えなかったから黙っていた。 まぁ、さほど不自然ではないだろう。 「今日はなんとも長い一日になりそうだ……」 ふとため息をつきながら、ただ千鶴に早く逢いたいなと思った。
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