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指先が入る。 つぷりと。 私の真ん中に。 たった五センチほどの長さが私の身体全身を震わす。 「……ぬるぬるしてる……」 「感想言わないで。恥ずかしい」 「気持ちいい?」 「ん……。でも、もどかしい。中を撫でて欲しい、かな」 「分かった」 でも下からって指、動かしにくい。 上になっていい?と、聞く彼。 人の中に指を挿れて上も下もないとか思ってしまった。 そんな私は可愛くない女だと思った。 とりあえず余計な事は言わずに小さく頷いて、上と下の場所を入れ替わった。 一度、指を抜かれてしまったが次は迷わずにスムーズに入ってくる指。 次は6センチ位深く私の中に納まる指「ほら、やっぱりこっちの方がいい」そう言いながら微笑する彼。 その少しはにかんだような笑顔は一時間前ほど前に私を駅でナンパした顔を思い出させた。 中を掻き回されながら同時に記憶も彫り起こされれるように、彼のすらりとした首筋に手を回しながら色々と思い出していた。 ──何て事はない。 半年前に両親がセッティングしたお見合いをして。 両親が用意した格式ある家の長男と私は本日正式に婚約が決まった。 両家の親が勝手に結婚の日取りを決めただけ。 後日、結納やら両家の家族のご挨拶等があるらしい。 ようやく実家が私の出荷場所を決めたのだと思っつた。 そこに至るまで勿論、その長男──(あきら)とはお見合いで顔を合わせ、3回目のデートでセックスに至るほどには順調に、男女交際をしていた。 明はモデルもかくやと言わんばかりのルックスで、黒髪、黒い瞳、怜悧な美貌の持ち主だった。 仕事も歯科医師。 こんな高嶺の花みたいな人が私の夫になるなんてだと思った。 そして私も──自分勝手だと思うが。 可哀想だと思った。 だから、せめて、最後に見知らぬ誰かと、名前が変わる前に。 婚約前に一度遊んでみたいと思った。 昔みたいに、あのときみたいに何にも私の事を知らない人にただ求められたいと思った。 そしてそんな中声を掛けてきたのが、今私のイイところを必死で探ってきている彼だった。 「千鶴、どうかした? 痛かった?」 ──流石に別の男の事を考えていたとは言えなくて。 「……痛くないよ。大丈夫。それに私、痛いのには慣れているから」 「それって。んっ」 余計な事を言ってしまったと思った。 そして余計な事を最後まで言わせないように私は彼の口を塞いだ。
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