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「君がいてくれるから、私は頑張れるんだから」
「でも僕は、あんまり頭も良くないし、鈍いし、フリーターだし」
僕がぐちゃぐちゃになって吐き出した言葉を「それでも」と彼女が遮った。
「君じゃないと、私は駄目なの」
何も言えずに泣く僕のことを、彼女はもう一度ぎゅっと抱き締めた。
「ねえ、ご飯食べてないでしょ」
僕の嗚咽が止むのを待って、彼女は言った。
「私、なにか作るね」
僕から離れようとした彼女の身体をぎゅっと抱き締めた。
「もうちょっと、もうちょっとだけ」
「でも、お腹すいてない?」
言ってすぐ彼女のお腹がぐう、と鳴った。
「私はすいてるんだよね」
恥ずかしそう言った彼女の顔を見ていると、僕のお腹もぐう、と鳴った。
「僕もすいてるみたい」
僕は彼女を見て「ふふ」と笑った。彼女も「あはは」と笑った。
「仕方ない」
彼女は僕の背に手を回して「本当に、あと少しだけね」と僕を抱き締めた。
「うん。あと少しだけ」
僕は彼女の身体に寄り添うように顔を寄せて、あと少しだけの幸せな時間を、体いっぱい噛み締めた。
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