9人が本棚に入れています
本棚に追加
6.
「お誕生日、おめでとう」
彼女は僕に朝一でそう言った。
「ありがとう」と僕は返した。返してからカレンダーを見て、そういえば僕の誕生日は今日だったっけと思い出した。
「お休み取ったから。今日は水曜日だから、お仕事休みでしょ?」
彼女は僕のコンビニバイトのことを「仕事」と言う。気を遣ってくれているのかもしれない。
「うん休み」
「どっか、行きたいとこある?」
彼女はしっかりメイクをした顔で、ばっちり決まったファッションでそう言った。
「ああ、ええっと」
僕は考えて答えを出した。
「特にない」
彼女は深く溜息を吐き、「本当にもう」と言った。
「そう言うと思って、プランは勝手に考えた。とりあえず支度して」
僕は言われるがままに顔を洗って寝癖を直して歯を磨いて、服を着替えた。支度が出来ると彼女は僕を助手席に乗せ、車を運転してどこかへ向かった。僕は窓の外に流れていく景色をじっと見た。
最初のコメントを投稿しよう!