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7.
慌ただしく出勤する彼女を見送り、朝食でも摂ろうと冷蔵庫を開け、やっぱり面倒臭くなってやめた。冷蔵庫から紙パックの野菜ジュースを取り出してリビングに向かう。
ソファーに腰掛けると、テーブルの上に瓶があることに気付いた。中には、昨日僕が拾った貝殻が詰められていた。きっと彼女がやってくれたのだ、と思ってその瓶を持ち上げて振って見た。しゃらしゃらと音がした。
紙パックの野菜ジュースにストローを刺し、口にくわえた。ゲームを付けようとしてふと、昨夜彼女に貰ったばかりの新しいゲームのケースに目がいった。今僕がプレイしているゲームのシリーズ最新作だった。
「本当は、欲しかったんでしょ?」
彼女はにこにこと笑い、僕にこれを手渡した。僕は「ありがとう」と言ったけれど、本当は、このゲームを欲しいと思ったこともなかった。正確に言うと、このゲームの発売自体を知らなかった。
なんだかその気になれなくて、ゲームをつけるのをやめた。ずず、と音が鳴るまで野菜ジュースを飲みほして、空き容器をテーブルの上に置き、もう一度ソファーに座って貝殻の小瓶を手に取ってしゃかしゃかと振ってみた。
「ああ、疲れたな」
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