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「あ、ごめん」
スマートフォンがぶーっと振動し、彼女の声色が変わる。
「もしもしー。はい。お疲れ様ですー。ああ、全然大丈夫ですよお──」
営業トーク用の鼻にかかった声を電話の向こうに向けて、顔にも営業スマイルを張り付けた彼女の声を少し遠い感覚で聞きながら、ミケちゃんのトレーニングのスケジュールを組む。大会一週前には体力を回復させるために休養させる必要があるから、と頭の中で考える。ミケちゃんは僕の指示を待って画面の向こうで楽しそうに蝶を追いかけていた。
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