残された力

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残された力

「駄目。もう一歩も歩けないわ」  遥か先に見える会場に、母上様が音を上げる。 「ええっ? 行きたいって言ったの、母さんだろ」 「それにしたって、シャトルバスくらい出てると思ったのよ。こんなに遠いなんて」  知らないよ。  掘り出し物市とかまったく興味ないイベントなのに、荷物持ちとして引っ張り出されただけだもん。  提示された報酬につられて来た。  そんな僕に、"歩けない"と訴えられても。 (じゃあ帰ろ、くらいしか提案できない) 「あっ、あれ!」  そう言って、突然母さんが指さしたのは。 (タクシー?)  ちょうど人が降りるとこ。この近くのお店に送ってきたんだな。 「待って、乗ります。乗せて!!」  一歩も歩けなかったはずの母さんが、タクシー目がけて走り出した。    ……むちゃくちゃ体力残ってんじゃん!!          ― おわり ―   
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