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どうあがいたって、一介の村人であるキールが勝てる相手ではない。キールはマルクをかばうように抱きかかえると、涙目になりながらも目の前のドラゴンを睨み付けた。
するとその時、一陣の風が吹いた。
思わず目を閉じたキールが恐る恐る目を開ける。その視界に入ってきたのは、王都直属の紋章が入った風になびくマントと、大きな背中だった。
「終末の、騎士団……?」
それはこの村を含む、大陸を治める王都に仕える騎士団の象徴だった。キール自身、その存在をこの目で見るのは初めてのことだった。
「坊主、立てるか?」
目の前にある背中から声がする。低く鋭い、地を這うようなその声音に、キールはぶるりと身震いをした。
「俺が合図をしたら、チビ介を担いで走れ」
低い声の指示にキールはマルクを抱き上げながら、その背中に頷いた。
「グルルルル……」
ドラゴンが唸る。まるで獲物を横取りされたことを怒っているかのようだ。そしてドラゴンがその翼を大きく広げた瞬間、
「走れ!」
騎士団の団員であるだろう男の声に、弾かれたようにキールは走った。背後ではもの凄い音がする。
肉を切り裂くような音に加え、鉄の匂いが漂ってきた。
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