寒い部屋

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寒い部屋

 木枯らしの吹き抜ける室外から帰宅すると、家のなかがいつにも増して冷たいことに心が折れそうになった。  高校の制服の上にコートを羽織ったまま電気を着けて、石油ストーブに火を入れる。そのまま僕は、ぼんやりとそこにしゃがみこんでしまった。  はあ。こんなに心細いことがいままであっただろうか。  ストーブの炎は明るく元気よく揺れ始めたが、部屋のなかが温まるまでには時間がかかりそうだ。日が暮れて外は真っ暗なのに、カーテンが開きっぱなしだった。  僕は家のなかのすべての部屋に立ち入ってカーテンを閉めてまわった。そんなことをした経験は思い出せる限りない。  こんなふうに寒い夜にはいつもカーテンが閉まっていて、部屋は明るく暖かかった。  みんな母さんがしてくれていたことだ。当たり前だと思っていたが、全然当たり前のことではなかった。
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