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プロローグその2
【プロローグその2】
重苦しい雰囲気が海水と共に皮膚に染み込んで、急速に脳内へと伝わってくる。
「そいつも別の星から来た可能性が高い」
わざわざ声に出して指揮官は俺に言った。念を押すためだった。
視界がゆらゆらと波打つ海底世界。体中にまとわりつく海水が、懐かしさを呼び起こす。
しかし、居心地は非常に悪いものだった。深海での暮らしはかなりの時間を有していたが、もう地上の方が慣れてしまっている。
「そいつらは他の生命体と変わりないんだな?」
その言葉に俺は静かに頷いて、無理やり唾を飲み込んだ。
「一人目に引き続き、しっかりと監視しておけ」
指揮官は俺に背を向け、岩にしか見えない大きな機械の前に腰を下ろした。
その黒いごつごつとした機械から、たちまち無数の泡ぶくが発生する。
新しい情報を記憶させているようだ。
「何かあれば、次は即座に報告をしろ」
そんな嫌味を最後に、指揮官はもう口を開くことはしなかった。
代わりに海水を通じて、深海の方での近況報告を寄こしてきた。
俺は軽く頭を下げた後、水の抵抗を全く受けることなく機敏に踵を返した。
だが、その足取りは恐ろしく重い。
こんなことが、いつまで続くのだろうか。
一人になった俺は派手にため息を吐いた。
俺の心は揺れていた。
果てなく満たされたこの大量の海水のように、吸い付くほどに取り囲んでいる様々な邪念が、正常な思考を圧迫する。
それでも今は、流れに任せることしかできない。
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