プロローグその2

1/1
前へ
/43ページ
次へ

プロローグその2

【プロローグその2】  重苦しい雰囲気が海水と共に皮膚に染み込んで、急速に脳内へと伝わってくる。 「そいつも別の星から来た可能性が高い」  わざわざ声に出して指揮官は俺に言った。念を押すためだった。  視界がゆらゆらと波打つ海底世界。体中にまとわりつく海水が、懐かしさを呼び起こす。  しかし、居心地は非常に悪いものだった。深海での暮らしはかなりの時間を有していたが、もう地上の方が慣れてしまっている。 「そいつらは他の生命体と変わりないんだな?」  その言葉に俺は静かに頷いて、無理やり唾を飲み込んだ。 「一人目に引き続き、しっかりと監視しておけ」  指揮官は俺に背を向け、岩にしか見えない大きな機械の前に腰を下ろした。  その黒いごつごつとした機械から、たちまち無数の泡ぶくが発生する。  新しい情報を記憶させているようだ。 「何かあれば、次は即座に報告をしろ」  そんな嫌味を最後に、指揮官はもう口を開くことはしなかった。  代わりに海水を通じて、深海の方での近況報告を寄こしてきた。  俺は軽く頭を下げた後、水の抵抗を全く受けることなく機敏に踵を返した。  だが、その足取りは恐ろしく重い。  こんなことが、いつまで続くのだろうか。  一人になった俺は派手にため息を吐いた。  俺の心は揺れていた。  果てなく満たされたこの大量の海水のように、吸い付くほどに取り囲んでいる様々な邪念が、正常な思考を圧迫する。  それでも今は、流れに任せることしかできない。  
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加