プロローグ

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プロローグ

【プロローグ】  幼い頃、私は海に落ちたことがある。  覚えているのは、雲一つない青空と、どこまでも続く大海原。  視界を遮るものは何もなかった。  掴まれそうな岩なんてどこにもなくて、もちろん岸辺や、崖も近くには存在していなかった。  大海原のど真ん中。  そう直感した。  見渡す限り、真っ青で、真っ青で、真っ青で、真っ青で……。  視界は空と海とを行き来して、次第にぼやけて、最後には閉ざされた。  瞼を持ち上げる力はなくなり、あがきもがく腕や足も覇気を失っていく。  呼吸をするために開けた口で海水を飲み、喉には痛みが広がった。  やがて私は疲れ果て、あえなく海上へ留まることを諦めた。  肺の空気を吐き出しながら、海の底へと落ちていく。  どこまでも、どこまでも。  地球の中心を目指して……。  
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