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この町の酒場「飛竜亭」はいつも賑やかだ。今夜もダンジョン帰りの冒険者たちが集まり、各々の武勇伝を酒のつまみにジョッキを傾けている。
「いやぁ、今日の魔物も強敵だったな」
ひげ面の大男が、同じテーブルを囲む冒険者たちに向かって声を張り上げた。
「そいつが俺に向かって炎を吐いたとき、どうなることかとヒヤヒヤしたぜ」
他の冒険者たちは、大男の話に相槌を打ったり、先を促したりと興味津々だ。
「そこでだ、俺はそいつの炎をものともせず、ガッと近づいて、この斧で頭をかち割ってやったのさ! そうして仕留めたのが、今日のメインディッシュだ」
大男が手を叩くと、店の奥から店主と給仕が、大きなまな板と鍋を運んできた。まな板に乗っているのは絞めたばかりの大きな火蜥蜴。店主がそれを手早く捌き、衣を付けて鍋の油で揚げると、ジュワッ、と音がして緑色の炎が上がった。からりと揚がった火蜥蜴の唐揚げに、冒険者たちは歓声を上げた。
「さぁ食った食った、今日は俺のおごりだ!!」
* * *
騒ぐ一団から距離を置いて座っていた端正な顔立ちのエルフが、苦笑しながら呟いた。
「まぁ、火蜥蜴にひげを焦がされて大騒ぎしていたあの人を、私が魔法で助けたんですけどね」
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