第一章:薬剤師ダミ子の日常

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研究所のドアは爆発で木っ端微塵にされたため、ドアのあった場所がぽっかりなくなっている。 ザ・吹き抜けスタイル。 隣の廊下が丸見えだった。 「これはこれで開放感があっていいか」 なんて現実逃避していたら、廊下から物凄い勢いで研究室に何かがが入ってきた。 ネズミである。 「ダミ子さあぁぁぁん! 大変です!!」 ネズミはハスキーな声で人語を喋る。 するとボフン、と音を立てネズミは青年の姿になった。 青男はダミ子の肩を掴み揺さぶる。 「ダミ子さん、大変です。大変なんです!」 「お、おお」 ガタガタ揺れるダミ子。 青年の耳には金色のピアスが揺れ、男にしては長い髪がサラサラと波打つ。ダミ子やカモミールと同じく白衣を着ているが、研究所の格好としては不釣り合いな装いを男はしていた。 「ゆするなゆするな、眼鏡が落ちる」 「はっ! すみません。女性の肩を強く掴むなんて……」 うろたえる男。 チャラい見た目とギャップを感じさせる彼はダミ子の助手をしている。 青年の名はマース。 隣国・ネムーニャ王国の元スパイの魔法使いだ。 今は成り行きでダミ子の助手をしている。 ネズミの姿に変身することができることから、よくダミ子の実験台にされる可哀想なお目付け役だ。 「ってあれ!? ドアがない!」 「騒がしいなぁ。ドアならさっきの爆発でお亡くなりになったよ」 「ああ、研究所から煙が出てるなと思ったら。ダミ子さん今月で何度目ですか」 この会話、デジャヴを感じる。
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